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故国の滅亡を伍子胥は生きてみれませんでしたが、私たちは生きてこの魔境カルト日本の滅亡を見ます。
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住職のひとりごと  より

上記文抜粋
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宇宙の真理とは

宇宙の真理とは何ですか、と問われました。それは、宇宙を成り立たせている法則、摂理のことでしょうか。この大宇宙を成り立たせているエネルギーのもとのようなものでしょうか。毎日お日様が上がり、朝が来て昼間があり夜が来て。春夏秋冬の季節をもたらす地球の歩み。そうした宇宙の営みを通じていのちが生まれ成長し進化して私たちがあります。そうした生命の営みを成り立たせている規則正しい自然界の秩序ともいえましょうか。

実は、この質問は、月例行事であるお話会で、真言宗の常用経典理趣経の解説書、松長有慶先生著『理趣経』(中公文庫)を皆さんと読んでいて、その途中で発せられたものでした。この経典の中にある平等という言葉を解説(同書150頁)する部分に「平等とは仏と自分が一体であることです。千円札を両替機にくずしても値打ちは変わらないという意味の平等ではありません。自分と宇宙の真理、自分と絶対者が一つだということが平等です」とあり、そこにある「宇宙の真理とは何ですか」と素朴に質問されたのでした。

そこで、それはお日様であれば、遮られることのない温かな光りであり、いのちを育み、実りをもたらす働きということになりますが、この理趣経の教主である大日如来そのものがそうした働きを象徴する仏様ということになりますかね、とお答えしました。そして、そのときは、大日如来であれば、その智慧を四つに分けられるというような話は既にいたしましたね、と申し上げるにとどまりました。が、それは宇宙の真理、そのものを象徴する仏が大日如来といわれるが故の答えでした。(同書79頁)

そのページには、「法は仏教の真理ですから、真理は常にあるという考え方が仏教にはあります。釈尊がこの世にお生まれになって、自分自身で作り出した真理ではなく、この永遠の宇宙の真理を釈尊がこの世にお説きになったのだと考えるわけです」また、「釈尊の悟られた真理そのものを仏さまと考えた、それが大日如来ということです」ともあります。

そこで、お釈迦様がお説きになった法、つまり永遠の宇宙の真理とは何かといえば、それは生涯お釈迦様がお説きになられた三法印または四法印といわれる「諸行無常・諸法無我・(一切行苦)・涅槃寂静」でありましょう。そして、それらを総合した「縁起の法」があり、それを理論的実践的体系として説かれた「四聖諦、苦諦・集諦・滅諦・道諦」でありましょう。

一方、お釈迦様が悟られ説かれた真理そのものを仏とした大日如来の功徳とは、「除闇遍明、能成衆務、光無消滅」と言われます。暗い中で光を点す、それは智慧の輝きを表しており、それは誰にも普く温かさをもたらすというお徳を表しています。そして、一切に行きわたるお勤めをしてすべての者を育てていく役割を通じてその慈悲の働きを、消えることのない光とはその真理の永遠で不滅であることを表しているといわれます。(同書98頁)

そういう徳、性格をもつ大日如来は金剛界の曼荼羅の仏さまの世界では、その中心となり、周りには四人の仏が取り巻き、それぞれ大日如来の智慧を分け与えられているとされています。四つに分けるのでこれを四智といいます。東に阿閦如来、南に宝生如来、西に阿弥陀(無量寿)如来、北に不空成就如来となり、それぞれ大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智という智慧を表し、大日如来の智慧は特に法界体性智というとのことです。

大円鏡智とは、水があらゆるものを映しとるように一切のものを映しとる智慧で、平等性智とは、水に高下なく平等に映すようにいろいろなものの中に共通した性格を見つけ出す智慧。妙観察智は、水は平等にいろいろなものを映し出すけれども、それぞれ違った色形を映す、その違いを見つけ出す智慧、そして、成所作智は水が一切のものを育て、はぐくむ行動、活動を起こすもとになる智慧のことです。そして、法界体性智はそれらの智慧を一切の所に遍満することであるとあります。(同書110頁)

ではこのお釈迦様の説いた法、四法印と四智とはいかなる関係となるのでしょうか。

ところで、私たちには五官の表面的な感覚を捉える心である前五識があり、その五識の結果を認識するとき以外にも特別の禅定や睡眠時以外常にはたらいている第六意識があります。さらに、その表層の心理である意識の背後に深層の心理として、思いによって自我意識を構成する心である末那識があり、さらにその背後に前世の業の蔵としてのアーラヤ識があるとして、こうした心の構造分析を行う考え方を唯識といい、3世紀から4世紀、インド大乗仏教における実践思想として起こり、その展開として密教も発展していきました。

平川彰著『インド仏教史』下巻第四章後期の大乗仏教・第五節唯識の教理(150、162頁)によれば、前世の業の結果として成立したアーラヤ識は遺伝や性格記憶などが種子として保存され個人の人格を形成する、人格の主体となる心であり、この心が阿羅漢という最高の悟りを得ると転じて大円鏡智になるとあります。また、意識の背後にあって絶えず自我意識を構成している末那識は自我への執着に汚れているが、悟りを開き我執がなくなると平等性智に転化するということです。そして、自心の相や実我の見をおこす、また身体や心を自我と見るとらわれをおこす第六意識が転じると妙観察智、五官に入る対象を感覚として認識する心である前五識が転じると成所作智になるとあります。

一番深いところにあってその人の人格そのものとしてあるアーラヤ識が、遺伝したもの性格として作用するもの、記憶によって様々に影響をその上の心に及ぼすものが無くなってしまうと、真っ平らな鏡の様な全てのものをありのままに映し出す智慧・大円鏡智に転化するということです。自意識の元になる末那識の自我への執着が無くなると、全てのものに個々の長所・価値があり、その良いところが見えてきて皆平等に価値あるものが見える智慧・平等性智に転化するということです。そして、様々な思い、感覚から自分自分という思いの中にある第六意識から誤った見解がなくなると、全てのものをよく観察することができるようになり、それぞれの違い、特徴、本質が見えてくる智慧・妙観察智に転化するのです。さらに自分という思いとともに感覚をとらえる前五識はその自分というとらわれから脱すると、すべてのものをよくとらえ、それらをはぐくみ育てる智慧・成所作智に転化するということです。

さて、この唯識思想では心の構造について分析する他に実際の精神活動についても独特の言葉を用いて思想を展開しています。心の働きについて、まず外から入るものによって心の作用が生じることを依他起性といいます。次にその心の作用は言葉によってあれこれと思索し妄想していることを遍計所執性といいます。それから、そうした迷った心が全て消え去った真実なる認識のことを円成実性といい、これら三様の心のあり方を三性といいました。

平川彰著『インド仏教史』下巻(159頁)には、「依他起の識が煩悩に染ぜられているから、遍計所執性の世界が出現するが、この依他起において煩悩がなくなれば、識は無垢識となって円成実性が顕現する。すなわち転依とは、識の質的転換をいう。・・・大菩提は八識を転じて四智を得ること」であるとあります。

また、水野弘元著『仏教要語の基礎知識』(165頁)には、「心は染浄の両者にわたる依他起性を、仏は悟界のプラス価値を示す円成実性に、衆生は迷界のマイナス価値を示す遍計所執性にあたると見れば、依他起性は縁起一般と、遍計所執性は流転縁起と、円成実性は還滅縁起と関係していることが知られる」とあります。

ここで、唯識思想の展開が、お釈迦様の説かれた四法印と重なり、依他起性は諸行無常と諸法無我、遍計所執性は一切皆苦、円成実性は涅槃寂静を言い換えたものと捉えることができます。密教思想の中に説かれる真理は、お釈迦様の説かれた初期仏教における真理・四法印の言葉を換え、捉え方が変わりながらも継承したものであると考えることができるのです。

すべての現象が無常であることをつぶさに観察すること(諸行無常)によって、それぞれのものたちの変化違いをとらえることができ(妙観察智)、すべてのものが無我である知ること(諸法無我)によって、みなそのものの実体なきものとしての共通性を見出すことができる(平等性智)。一切の現象が苦であるとさとること(一切皆苦)によって、良き活動の原点となり(成所作智)、静かなる悟りに至れば(涅槃寂静)、ありのままにすべてのものを見通すことができる(大円鏡智)でありましょう。

いずれにせよ、私たち自身もその真理の故に生まれきて、その恩恵により育まれ生き、その真理にのっとり生きているということであり、その宇宙の真理と一体であるからこそ、いまこうして生きているということになるのであろうと思います。

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抜粋終わり


お読みくださりありがとうございます。
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